“良い?悪い?” (あおばタイムズ 59)

 失敗するのは…良いことでしょうか? 悪いことでしょうか?
 病気になるのは…良いことでしょうか? 悪いことでしょうか?
 物事について「これは良いこと」だとか「これは悪いこと」だと言って勝手に判断するのは人間ぐらいのもので、ほかの動物や植物たちは、きっとそのようなことはしていないと思います。「晴れているから、よい一日」、「雨降りだから、ゆううつな一日」…なんて言っているのも、おそらく人間だけなのではないでしょうか。
 カウンセリングや心療内科の診察で「うつ」になった方にお会いする機会が多いのですが、お話を聞いていると今回のテーマに関連したことをしばしば考えさせられます。あるお二人の患者さんがいて、同じ時期に、同じ薬を同じような量使って、程度的にも同じ「うつ」を治療し始めたとします。…ところが数ヶ月間、薬を使って治療を続けたところで、お二人の回復に差がみられてくることがあります。お一人の方は、こう言います。「先生、全然よくなりません。以前は何でもやりたくて積極的に動く方だったのですが、今は全然やる気になりません。やる気が出ないので、ずっと家でじっとしているばかりです。家族からは以前よりも元気そうだと言われますが、まったくよくなっていないと思います。…」もうお一人の方は、診察の時にはあまり多くを語りません。しかし時とともに少しずつ表情が和らいできているように感じられ、少なくとも徐々に回復しているのはまちがいなさそうです。
 このようなお二人のちがいは、一体どこからくるものなのでしょうか?…医者である私の目から見れば、お二人とも確実に、以前よりも「うつ」の症状が軽くなって回復に向かいつつあることはまちがいなさそうです。しかしお一人は「まったくよくなりません」と言い、もうお一人はとくに何もおっしゃいませんが、目に見えてよくなってきている…ということです。お一人には「うつになる前とまったく同じ状態に戻ることしか考えていない」といういわば定められた『目標』があり、もうお一人には「きっとよくなるだろう…」という、あまり明確ではないかもしれませんが“希望”がある…という違いのようにも思えます。
 この話に関して心に浮かぶのは、欧米の進んだ文明が南の島々へ入ってきた頃にサモア島の酋長であったツイアビという人の語った言葉…『パパラギ』というロングセラー(岡崎照男訳・立風書房刊)の中に収められている言葉です。―“それゆえあらゆる考えを正しくたどるなら、だれでも、結局いつも自分が愚かなままであり、自分で出すことのできない答えは大いなる心におまかせするほかないことに気がつく。”…人間が自らの力でコントロールできる範囲と、それを超える領域とを区別することは、生きてゆくうえで大切なことなのかもしれません。

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“「うつ」になった時、どうする?” (あおばタイムズ 56)

 「うつ」になってしまった時、病院での薬を使う治療と、カウンセリングのような心のケアとでは、どちらが大切なのですか?」と、よく聞かれます。今回はこの問題について考えてみたいと思います。
 まず皆さんに知っていただきたいことは、「うつ」というのは誰にでも起こりうる状態だということです。あまり“病気”というイメージでとらえていただきたくないと思います。多くの患者さんを診ていますと、「うつ」はその人の生き方に対するメッセージのように思える場合がほとんどです。決して、「うつ」にならずに済みさえすればそれでよかった…というものではなく、「うつ」を経験することによって多くのことに気づかされたり、それ以降の人生がより素晴らしいものになったりする…そんな、大変な苦労を伴うが、同時に大切な贈り物でもある―というのが、多くの方の「うつ」の本質なのです。
 「うつ」になってしまった時、自らの力で「うつ」からのメッセージを理解することができる場合と、そうでない場合とがあります。カウンセリングは、「うつ」からの“気づき”を得るためにお役に立てるものだと思います。たとえば、客観的にみると仕事のうえでオーバーワークだったり人づき合いで無理をし過ぎているような方でも、ご本人にとってはそれが“あたりまえ”であることが多いものです。カウンセリングを通じて、徐々に納得できるかたちで自分が無理をしていたことに気づくことができれば、その後の生き方が変化して体や心のペースを乱しにくくなったり、よりいきいきと生きることができるようになる方が多いのです。
 ただ、カウンセリングを受けたり自分の生き方について考えるには、ある程度の心と体の“体力”が必要です。「うつ」の症状がひどい時期にそのようなことを試みても、考えることさえも苦痛に感じられたり、かえって心と体が疲れきってしまう場合があります。ですから「うつ」の症状がひどい時のカウンセリングは、あまりお勧めできません。まず「うつ」の苦しい症状をできるだけ早く改善させていくためには、抗うつ薬が現在最も広く用いられている有効な手立てだと言えます。一般的には二、三ヶ月ほど内服を続ければ効果が出てきますので、それ以降は薬による治療とカウンセリングを組み合わせるのが望ましいと考えます。つまり、「うつ」をより早い時期に改善させるための薬による治療と、「うつ」になった経緯を振り返りながら今後の生き方について考えるカウンセリングとは、「うつ」の状態や時期によっていずれも大切な意味をもっているのです。

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“「うつ」は架け橋” (あおばタイムズ 55)

 テレビや新聞で頻繁に「うつ」の話題が取り上げられ、自分の身の回りにも「うつ」の人がいるという方が増えているようです。それは一体なぜなのでしょう?―今回は、そのことが示す意味について考えてみたいと思います。
 多くの「うつ」の原因は何か?~私はそれを、“人間のたましいから心と体へのエネルギーの流れがブロックされてしまうこと”と、敢えてシンプルに表現してみたいと思います。
 私たちは小学校の頃から、あるいはもっと早く幼稚園の時代から椅子にじっと座らされ、何時間も他人の話をほとんど一方的に聞かされて過ごすという生活に慣らされてきました。そんな時期が二十歳前後まで続き、ようやく社会に出て経済的に自立できるようになると、今度は例えば朝早くからオフィスに座って一日中パソコンの画面を見続け、ようやく仕事が終わって家に帰る頃にはすっかり日が暮れてしまっている…こんな、言ってみれば非人間的な生活が多くの人に当たりまえのことと思われているのが二十一世紀の豊かな?社会なのです。
 その時、“たましい”は思います。「こんなはずじゃない。ほんとうは、こんな生活はしたくなかったんだ!」と。…しかし私たちは子供の頃からずっと、“たましい”の声をあまり聴かないようにしながら生活することを続けてきてしまいました。「こんなに天気がいい日には外で遊びたいけれど、我慢して授業を聞かないと叱られてしまう…」、「仕事に明け暮れる日々で何のために生きているのか分からなってしまうが、お金をもらって生活していくためには仕方のないことだ…」。心と体は、たましいの声をシャットアウトしてでも現実の生活を回転させることに必死です。すると、“生きる”エネルギーの本源である“たましい”と、心と体との分離が起こります。それが長い期間続き限界まで達したのが、「うつ」の状態とも言えます。
 「うつ」を発症された方は、ある意味ラッキーです。なぜなら「うつ」は、“たましい”と心と体との間に分離が起きていることを教えてくれるサインだからです。サインに気づくからこそ、人は“何かを改めなくてはならないかも…”というおもいに至ることができます。気づかないままでいれば、ひょっとすると一生そのままで終わってしまうかもしれません。ですから今は「うつ」でない方も、ご自分の“たましい”から心と体へスムーズにエネルギーが通っているかどうかを確認してみることは、たいへん意義のあることだと思います。
 「うつ」は“たましい”と心と体とをむすぶ架け橋の役割を果たしてくれるものなのです。

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“睡眠薬は怖くない!” (あおばタイムズ 40)

 「睡眠薬」という言葉が暗くて謎めいたイメージを連想させてしまうのか、なかには服用するのに抵抗をもたれる方も多いようです。それに比べ「安定剤」の方が、まだ受けられやすいように感じます。ところが、これら二種類の薬は双子の兄弟のような関係にあるのです。
 現在使われている「安定剤」(正確には「抗不安薬」といいます)の多くは“ベンゾジアゼピン系”という一定の構造と働きをもつ薬の仲間ですが、同じベンゾジアゼピン系の中でも眠気を生じる作用が強く睡眠をとるのに適した薬を「睡眠薬」と呼んでいます。「抗不安薬」には脳が興奮し過ぎるのを抑え緊張を軽くしたり気持ちを落ち着かせる作用があり、不安感やいわゆるパニック状態などにも効果があるのですが、「睡眠薬」には寝つきを良くしたり夜中に目覚めてしまうのを防ぐなど、深くて質の良い睡眠へと導いてくれる効果があるのです。
 『怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか』という新書が評判でテレビにも登場した脳の働きに詳しい黒川伊保子さんが最近、『「しあわせ脳」に育てよう!』という本を発表されました。私がここで内容をお話しするより、「子育てに関係のある方もない方も、ぜひ読んでみてください!」と強くお勧めしたいのですが、要は子供たちの幼い頃から様々なお稽古事などをさせる「教育」よりも、まずは生物としての脳や体が十分に機能を発揮できるよう成長させる“気配り”をすることこそ親のつとめである…といった、私の考えるカウンセリングのあり方からもおおいに共感できる内容が数多く含まれています。なかでも『睡眠』がいかに大切かについて、これほど見事に著された本はないかもしれません。
 そこでズバリ一言。“睡眠薬は怖くない!”のです。不眠や心労が重なり「うつ」になる寸前だった多くの方々が、睡眠薬を使って良く眠ることで救われています。24時間営業のコンビニや深夜のカラオケが当たり前の今こそ、睡眠の大切さを見直す時期ではないでしょうか。

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“抗うつ薬の注意点” (あおばタイムズ 39)

 「抗うつ薬を長いこと飲み続けているのに、うつの症状がいっこうに良くなりません」-そう言って私のカウンセリングルームへ相談にみえる方が後を絶ちません。そこで今回は、抗うつ薬治療の注意点についてご紹介したいと思います。
①抗うつ薬を飲み始めてから「余計にだるくなった」あるいは「日中も眠くてしょうがない」という方がいらっしゃいます。うつの多くはストレスや働き過ぎ・不眠などによる脳や神経の疲労が原因であることから、治療の初期には薬が心身を休息させる方向で働きます。そのため一~二ヶ月前後の期間はだるさや眠気が続くことも多いのですが、それはむしろその後の改善が期待できる状態なのです。
②抗うつ薬の効果が自覚されるまでには早くても一ヶ月前後、長い方ですと三ヶ月以上かかる場合があります。抗うつ薬は安定剤(抗不安薬)や睡眠薬とはちがって飲んだらすぐに効果が現れるというものではありませんから、病院の先生とも相談しながら長期間服用を続けることで効果が実感されるようになる場合も多いのです。
③薬をやめる際にも、症状が良くなったからといって急に中止してしまうのは危険です。私の患者さんの中にも、自己判断で薬をやめてしまってから一ヶ月ほどしてうつの症状が再発し、当初の見込みよりも長期間服薬しなければならなくなった方がいます。抗うつ薬の増量・減量および中止の際は、必ず医師の指示を仰ぐようにしましょう。
④人間の心の力はとても強いので、たとえ状態に合った薬を飲んでいても、飲んでいる方自身の不安が強すぎると効果が現れにくい場合があります。薬に関する疑問は医師に対して積極的に質問し、安心して服用を続けることこそ回復への早道だと思います。

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「春眠、暁を覚えず」のココロ

 このところ、あまり体調が良くありませんでした。
 今年の花粉症はそれほどでもない…ようですが、病院で診察をしたり自分の身の周りの方を観察していますと、
・くしゃみ・鼻水や咳の出る方
・のどがイガイガする方(エヘン虫?)
・顔が赤みをおびている方
・不眠、あるいは朝や日中の眠気が強い方
・ 何となく気分的に安定しない方
…などなど、3月後半から4月前半ぐらいにかけて多くの方が普段とはちがう症状に悩まされているようです。
 私もまた、くり返す咳や鼻水、何となく息苦しい感じが続いて疲れ気味になったり…ということがこの2週間ほど続いていたのです。

 春になって桜が満開となる時期、多くの花たちが一斉に花開く時期というのは何となく心躍るものですが、どうも自然環境が大きく変化するこの時期、暖かかったり寒かったり、気圧も大きく変動するこの時期というのは、同時に人間の体と心にとっては不安定になりやすい時期でもあるようです。

 アメリカなどの諸外国では夏休み明けの9月から新学期ですが、日本では春を迎える4月に新年度・新学期を迎えます。
 もうしばらくすると“五月病”といったことも話題にのぼりますが、毎年皆さんのココロと体の変化をみながら商売をしている私から見ますと、とくに自然の世界でも一年で最も変化の大きい時期…つまり、人間の体と心も大きな変動を経験する時期に、時を同じくして新年度や新学期を迎えて社会的にも大きな変化を経験してしまう私たち日本人にとっては、4月ごろから受けるいくつもの変化(言葉を換えれば、“ストレス”)のせいで5月ごろに反動が来ても全く不思議ではないように思われます。

 そこで、とりあえずその対策についてお話ししようと思うのですが、私は『睡眠』を対策の第一に挙げたいと思います。
 最初に私の体調がすぐれなかったということを書いたのですが、それにもやはり睡眠が影響していました。じつはこのブログは4月6日の夜に公開したのですが、どうもそれで無理をしたこともあって、7日に体調不良のピークが来てしまったのです。
…というわけで、自分への反省の意味もこめて『睡眠』について改めて考えてみました。

 どうも人間には、生まれつき「朝型」と「夜型」があるようです。
 ちなみに私はもともと「夜型」で、妻は「朝型」だと思っています。(私は夜中の1時前に生まれ、妻は早朝に生まれたのですが、このように誕生した時刻が「朝型」・「夜型」に関係しているという話もあります。)
私は妻と結婚してからは「朝型」の生活になり、今はもうすぐ1歳になる息子の生活リズムもあって朝5~6時に起きる生活ですが、まったく苦にならなくなりました。中学・高校の頃、ラジオ(オールナイトニッポンとか…)を聞いて夜中の3時~4時まで夜更かしをしていた自分からは想像もできないことです!

 よくあるパターンだと思うのですが、先日もカウンセリングへみえた方が「仕事が遅くなると夜10時ごろまでかかってしまい、それから自分のしたいことをして、資格をとるための勉強をするのが夜中2,3時ごろまで…」という生活パターンを話してくださいました。私の場合も朝が早いのですから、夜9時ごろ妻が子供を寝かしつけてくれた後はさっさと風呂に入って早めに寝てしまえば良いのですが、それからパソコンに向かったり読書をしたりが長くなってしまうと、どうしても翌日にひびいてしまうのです。そしてその積み重ねが、疲れや体調をくずす原因になってしまうようなのです。

 心療内科的なお話をしますと、睡眠不足は体だけではなく心にも大きく影響します。
 「うつ」やその前段階のいわゆる「自律神経失調」は、多くの場合には睡眠不足によって悪化します。逆にいくらストレスが大きくても、十分な睡眠さえとれていれば症状が出るまでに至らない場合が多いのです。
 ですから「うつ」や「自律神経失調」に対して安定剤(抗不安薬)や睡眠薬を処方してできるだけ脳や神経を休める方向へもっていくというのは、じつに理にかなったやり方です。ストレスで心配事が多い時には、いつも緊張したりイライラして脳が過活動になってしまいますから、安定剤を使うことでノーマルな状態に近づけることができます。睡眠時間が短かったり睡眠が浅かったりすると一日の脳や神経の疲れが翌日まで持ち越されてしまい、それが長引くと「自律神経失調」や「うつ」のひきがねにもなってしまいますから、睡眠薬の助けを借りてしっかり眠ることは心療内科的な症状の予防にもなるのです。

 十分な睡眠時間としては、1.5時間x4サイクル=6時間以上というのが一つの目安になります。
 睡眠は眠りの浅い状態から徐々に深くなり、深い眠りのピークから今度はだんだん浅くなって…ということを何度かくり返します。この浅い眠り→深い眠り→浅い眠りという1つのサイクルが約1.5時間なのです。これを1日の睡眠で4~5回くり返すのがベストではないかと言われています。5時間程度までの睡眠だと3サイクルとちょっとになってしまいますから、少し寝不足といったところでしょうか。

 「春眠、暁を覚えず」といいますように、古来、この春の時期というのは眠りに関してもふだんとはちがって、朝になってもまだ眠かったり、日中眠くなったり、はたまた夜の眠りが浅くなったり…と不安定になりやすいようです。けれどもこれらのことは異常ではなく、季節の変化に伴う、生き物としての人間の通常の変化の一つにすぎません。

 いくら社会がシステム化されて「スケジュール通りに事を進めたい!」と思っても、人間は人間。人間も生き物であり、人間の体と心は自然の一部なのです。
 仕事をしたり、日々の生活をつづけているとその事実を忘れてしまいそうになりますが、いつもそうならないようにココロがけたいものですね。

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「うつ」のココロ

 みなさんは「うつ」になったことがありますか?
 「うつ」になったことがあります。…そう自信をもって答えられる方は少ないかもしれませんが、「うつ」に近い状態になったことがあるような気がする。…という方は比較的多いのではないでしょうか。
 今や国民のおよそ十人に一人が経験するといわれる「うつ」。決して人ごとで済まされるものではないのです。

 今は「うつ」と関係がないという方でも、一ヶ月か二ヶ月先に「うつ」にならない保証はありません。長い一生を考えますと、一度や二度「うつ」に近い状態を経験することはめずらしくなくなってきています。ましてご家族や身近な方が「うつ」になることは、誰もが経験すると言っても言い過ぎではないぐらいです。
 ですから“自分は「うつ」とは関係がない”と思っているうちに「うつ」についての予備知識を持っておくことは、決して無駄ではないのです。

 「うつ」は、病院での診断名としては「うつ病」とか「うつ状態」といった名称で呼ばれています。
 ところで体の病気であっても心の病気であっても、具合の悪くなったことを表す名前を『病名』と呼ぶ場合が多いのですが、私はとくに心の状態に関しては『病名』という名称をできるだけ使わないようにしています。どうしても必要な場合には、『病名』ではなく「診断名」という言葉を使っています。
 なぜならそのような状態は、必ずしも“病気”とは呼べないからです。“病気”というよりもむしろ、必要があったからこそもたらされた“状態”と言った方が実状に合っていると思います。

 私たちが「病気」という言葉を用いる時、多くは「健康でない状態」という意味で用いる場合が多いと思います。それは言いかえると「正常でない状態」ということでしょう。
 ところが「うつ」に関して言えば、それは「正常でない状態」ではなく、「正常だったからこそもたらされた状態」ということができます。
 「うつ」は健康だった方が本当の健康をとりもどすための『警報』であり、「うつ」を経験する期間は再び健康に戻るための準備期間とも言えるのです。

 

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“ドクターズ・カウンセリング” (あおばタイムズ 34)

 私のカウンセリングルームには、心療内科や精神科の病院・医院へ通院されている方々もカウンセリングにみえています。「病院ではあまり時間をかけて話を聞いてもらえないのです」と不満を漏らす方もいらっしゃいますが、これには理由があります。
 一つは、お一人当たりの診察時間の問題です。「○○先生は時間をかけて話を聞いてくれる」ということになると、口コミなどで患者さんが増えていきます。ところが患者さんが増えていくにつれ、お一人当たりに割くことのできる診察時間は逆に短くなってしまうという、どうにも解決しがたい矛盾があるのです。
 もう一つは医療保険制度上の問題です。現在の制度では検査や診療の内容ごとに診療報酬が決まっています。たとえば心療内科などで「身体的傷病と心理・社会的要因との関連を明らかにし、心理的影響を与えて症状の改善、または傷病からの回復を図る」心身医学療法に対して与えられる診療報酬はわずか八百円(通院で再診の場合)。これでは医者が症状と生活状況や心理との関連を理解してもらおうと思っても、そのことに時間をかけていては病院の経営が成り立たなくなってしまいます。むしろ投薬や検査を多く行った方が、病院の利益になるというわけです。
 これらの理由から、現状では病院や医院での保険診療の中で時間をかけてカウンセリング的な治療を行うのは困難なことです。しかし心療内科や精神科へ通院中の方、なかでもうつ病やパニック障害、自律神経失調症や不眠症といった症状を抱える方にとって、ご自分の状態について詳しく知り不安を解消することは、治療のうえでとても大切なことです。ですから私の行っているような心療内科などの医者による『ドクターズ・カウンセリング』が、もっともっと広く普及して行って欲しいと願っているのです。

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心療内科医のココロ

「これからはますます心療内科が注目されるようになる」
「21世紀は、こころの時代になるだろう」・・・
 私が医者になった1990年代、いやその10年以上前から何度も何度も繰り返されてきた言葉です。
しかし、果たして実際にそうなってきたのでしょうか?

 私が心療内科医になろうと決心したのは、九州大学の医学生として学生実習で全科を回った時でした。患者さんの体だけでなく、その人の生活環境や人格としての特性も考慮しながら、一番時間をかけて診療をしていると感じたのが、ほかでもない心療内科だったからです。
 しかし今、私のカウンセリングルームへ訪ねて来た方々のお話を聴くと、「意を決して心療内科(あるいは精神科)にかかったのに、ものの5分と話を聞いてもらえなかった」と不満をもらされる方がたくさんいらっしゃるのです。

 もちろん、国家政策としての医療保険点数の問題などもあるでしょう。
 心療内科などで、身体的傷病と心理・社会的要因との関連を明らかにし、心理的影響を与えて症状の改善、または傷病からの回復を図る『心身医学療法』に対して与えられる診療報酬はわずか800円(通院で再診の場合)。つまりそのような心療内科的な診察に対して、医療保険上はわずか800円しか報酬が得られないということなのです。これでは医者がわざわざ時間をかけて患者さんのお話を聞いても診療報酬におけるメリットはあまりありません。むしろ投薬や検査を多く行った方が病院の利益があがる…ということになってしまいます。医者といえども家族の生活を支えスタッフに給料を出すといった現実的な経済問題は避けて通れませんから、理想は横において現実をとらざるをえないという場合もあるでしょう。

 それにしても…。
 それにしても『心療内科』の看板を掲げて診療をするかぎりは、初めて来た患者さんが今、何に困っているのか、どのような経緯でそうなったのか…といったアウトラインぐらいは、せめて10分や15分かけて聴いてあげる義務があると思います。
 毎回毎回は無理でも、「必要な時にはできるだけ話を聴こうと努力してくれる先生」という意識を持っていただくことが患者と医者との関係を良くし、それが症状の改善にもつながってくると思うからです。

 でも最終的に、私はこれらのことがシステムだけの問題だとは思っていません。
 要は、医者の側の意識の問題です。

 現時点では、心療内科へ受診したいという方は多くても、少なくとも私が住んでいる横浜などの都市部では医療機関の数が不足している状況です。多少、「あまり話を聞いてくれない先生だ」と思っていても、近くには他に心療内科がなかったり、職場の行き帰りに通院するのに便利だ、といった他の理由で通院を続けている方もたくさんいらっしゃると思います。
 しかし、もし将来的に心療内科の数が増えてくれば、医者の側も良い意味でのサービス向上に努めなければやっていけなくなるでしょう。(本当に親身になってお話を聴こうとしても、3分診療に慣れてしまった意識では、その時にはもうすでに遅いと思いますが…)

 それでも私の知っている先生のなかには、じつに優れた心療内科・精神科医もいます。
 たくさんの患者さんを抱えているなかで、短時間で的確な薬を処方し、症状から薬の変更が必要だと思われる場合は積極的に処方の見直しを行い、大事なことはきちんと患者さんに伝え、必要な時にはしっかりと患者さんのお話を受けとめる…。
 これらのことを同時に行うのは大変なことで、今は必ずしも医者の数が多くて競争が激しいとはいえない時期だけに、全体のレベルも低下しがちなのです。

 こんな折、患者さんの側-つまり一般の方-は自衛策としての情報の収集に努めておられます。世はインターネットの時代。症状や病名に関することから薬のことまで、それぞれのオリジナルなやり方で熱心に勉強されているのです。
 「もう、医者だけには頼れない!」…そんな叫びが聞こえてきそうな勢いです。

 しかし残念なことに、診察などの現場で患者さんが集めてきた情報をお聴きしてみると、臨床の実状には合わない内容がたくさんあります。
 書店で手にする書籍の中身は玉石混淆。インターネットの掲示板やチャットで得た情報は、いかにも表に出てきにくいリアルさにあふれているようですが、臨床の現場を長く経験した者の目から見ると「?」というものばかりだったりします。

 私は2004年の秋からカウンセリングルームを開きました。
 それまでは先輩の先生方のご協力もあって、心療内科での診療にも比較的時間をかけさせていただいていたのですが、患者さんも増えるなどしてそろそろ限界だと感じたのです。
 それぞれの医者にはそれぞれのやり方があって、とくに心療内科や精神科ではそのちがいがより鮮明なのではないかと思います。私の場合はずっと「できるだけ時間をかけて話を聴く」というスタイルでやってきたのですが、自分が思うような診療をさせていただくことで勤めていた病院やクリニックにもご迷惑をかけるようになってきたと思いました。
 そこで医療機関ではなく、保険診療でもなくなってしまうのですが、何でも自由に相談していただけて1時間程度ゆっくりお話ができるカウンセリングルームを開いたのです。

 おかげさまで、それまで病院やクリニックでお話をさせていただいたのとは比べものにならないぐらい、ゆっくりと、生活全般にわたる本来の“カウンセリング”をさせていただくことができています。(もちろん、症状があるなどして薬の処方が必要と思われる方には、私が勤務させていただいている心療内科などへの受診もおすすめしています。)

 ただ難点なのは、カウンセリングにもそれなりの料金をいただかなくては成り立たないということです。保険診療とちがって、なかなか「どなたにでも!」とお勧めできないところが苦しいところです。
 そんなおもいもあって、読んでいただくことで心療内科で診る様々な症状のエッセンスや、カウンセリングでお伝えしている日常生活に役立つヒントを理解していただけるような文章を書きたいと思うようになりました。

 私自身、日本に「こころの時代」はまだ来ていないと思っています。
 でも私の生きているうちに皆さんから、『こころの時代がやって来たのかもしれない…』と思っていただけるよう、少しでもお手伝いできればと思っています。

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“心の現代病” (あおばタイムズ 22)

 うつ病や不安神経症、パニック障害、自律神経失調症、不眠症…。心を中心に体にまで影響を与えてしまう一連の症状で悩んでいる方が増えています。
 昔は「うつ」のような病気がいわゆる精神病のように呼ばれた時期もありましたが、このような症状はむしろ“現代病”といってもいいぐらいです。つまり、条件が重なれば誰にでも発症の危険があるものばかりなのです。
夜の仕事や残業、インターネットやゲームで昼夜のリズムが逆転してしまったり、ゆっくり休むべき時間帯に眠れなくなってしまう、まとまった休息がとれないまま仕事や家事・育児に追われる(核家族化が進んで身の周りに頼れる人間が少なくなったことも一因です)、満員の電車やバス・渋滞や混雑の多い自動車といった移動手段を使いストレスを感じながら動かなければならない…すべてのことがこのような“現代病”のひきがねになってしまいます。
 病気というものは、その正体が分かっていればある程度は安心できるものです。「肝臓が悪くてγ-GTPの数値が上がっています」と言われれば何となくイメージがつかめますし、対処の仕方も想像がつきます。ところが心が関係する症状の場合には“どこが悪いのか”、“何が起こっているのか”見当がつかず、目安となる検査や数値もないことが多いのです。すると起こっている症状への不安に加え、その正体が何なのか分からないことでの不安まで加わってしまいます。このような不安を少なくするには、まずは専門家に相談し、心と身体の状態を少しずつ知ることだと思います。生活環境は人それぞれですから、カウンセリングを通じて徐々にご自分の状況が見えてくることと思います。

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“自律神経失調” (あおばタイムズ 17)

 疲れやすい、何となく体調がすぐれない、体に色々な症状が出てしまう…そんな時はっきりした原因が分からないと自律神経失調のように言われることが多いのですが、そもそも「自律神経失調」とはどのような状態なのかについてお話ししたいと思います。
 自律神経系には交感神経と副交感神経という二つの系統があって、人間が意識しなくても両者が内臓や体全体の働きを上手に調節してくれています。一生懸命活動したり緊張している時には主に交感神経の方が働き、食後やリラックスしている時には副交感神経が中心、というふうにまるでシーソーのように交互にバランス良く活動しているのが本来の姿です。日中動き回っている時には交感神経が活発に働き、仕事を終えてリラックスしたり、夜眠る時には副交感神経が優位になるようにできているのです。
 動物はたくさん活動した後には休息し眠りに落ちてしまいますが、忙しい現代人の場合はそうもいきません。仕事が終わるまで休みなく働き、本来は休息や睡眠をとるべき夜になってもまだ人工的な明かりの下で仕事をし続けます。すると自律神経のうち交感神経ばかりが働いてしまい、副交感神経の出る幕がなくなってしまいます。内臓などは両者が交代で働きかけることでうまく機能するようにできていますから、偏った状態が続くと様々な症状を出してしまい、そのような状態を「自律神経失調」と呼ぶのです。
 何より仕事が優先されることの多い世の中ですが、人間も生き物であって機械ではありません。このことは一人一人が幸せに生きるためにも忘れずにいたい事実です。

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“誰にでもあること” (あおばタイムズ 15)

 心療内科でうつ病やパニック障害の方を多く診察していますが、これらは何も特別な病気ではなく、誰にでもそうなってしまう可能性があります。わが国ではおよそ十人に一人の方が一生のうちに一度はうつの状態を経験します。また女性の約二十人に一人の方がパニック障害の症状に苦しんでいます。これらは決して持って生まれたものではなく、様々な要因によって誰にでも起こりうることなのです。
 “自律神経失調”という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、自律神経には活動する時や緊張した時に働く交感神経と、リラックスした時に働く副交感神経の二つの系統があります。これらが交替交代にバランス良く働いているのが本来の姿なのですが、時間に追われるような忙しい状態だと交感神経ばかりが活発になり、その状態が長く続くとなかなかリラックスできないようになってしまいます。最近の自律神経失調の多くはこのような状態から起こり、うつ病やパニック障害の引き金にもなってしまいます。
 昼も夜も関係なく仕事をしたり、誰にも頼らずに家事や育児をこなさなければならない…、そんな現代社会では体調を崩したり精神的に参ってしまうのは無理もないことです。ただ、それをたった一人で悩むことでさらなるストレスを生んでしまうことは避けたいものです。最近はこんな時、上手にカウンセリングを利用される方も多くなってきました。「誰かにこの気持ちを分かってほしい」、「一人では気持ちの整理がつけられない」、「心の病気ではないかと心配」…、様々なケースがあると思いますが、試みにカウンセリングルームを訪ねてみてはいかがでしょうか。

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”心の風邪” (あおばタイムズ 10)

 この冬は本格的に寒くなる時期が遅かったせいか、例年よりも遅い二月にインフルエンザ流行のピークがやって来ました。風邪のような症状であわてて病院を受診された方も多いことでしょう。
 ところで「うつ」の状態はよく“心の風邪”に例えられます。何となく体がだるくてやる気が出なかったり、食欲がなくなったりと、たしかに風邪の症状によく似ています。それに体の免疫力が落ちているとインフルエンザにかかりやすいように、過労やストレスが続いて心が疲れた状態だと、このような症状も出やすくなってしまうのです。なかでも風邪との一番の共通点は、誰でもかかってしまう可能性があること、時が来れば必ず良くなること、の二点でしょう
 今の医学では「うつ」の症状に対して薬を用いることがほとんどですが、薬を使わずに良くなりたいという方には早い時期にカウンセリングを受けてみることをおすすめします。実は「うつ」などの心の病気は身体の生活習慣病と同じように、ふだんの生活パターンや物事に対する考え方がきっかけになることが多いのです。今すぐ仕事や生活環境を変えることは難しくても、カウンセリングを通じて自分が置かれた状況に対する捉え方を変えたり、これから先どうやって生きて行くかについてじっくり考えてみることはできるはずです。体の風邪と同じように、心の風邪にも早めの手当てが必要なのです。

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“噛めば噛むほど…” (あおばタイムズ 6)

 私は日ごろ、個々の方の生活習慣に対するアドバイスを重視しています。心療内科という科はそもそも、『心と体のはたらきは切り離して考えることができない』というところに端を発しているのです。
 たとえば、食事の時に「よく噛んで食べる」ことを指導したことで、過食や嘔吐の症状が落ち着いてきた方がいらっしゃいます。拒食や過食の症状はストレスに影響されますが、心理面からだけでなく、体の面から症状を軽減できる可能性があるわけです。
 きんさん・ぎんさんは、晩年は歯がなかったので噛むことが出来ず大好きな刺身を飲み込んで食べていたそうですが、若い頃はよく噛んで食べていたと考えられます。よく噛んで食べることは、自分の身を守り、健康に長生きをする秘訣なのです。
 ぜひ実際に試してみていただきたいのですが、食べている物を飲み込まず、がんばって五十回~百回ぐらい噛み続けてみてください。ほんとうに体によい食べ物は噛めば噛むほど美味しくなりますが、添加物や保存料を含んだ食品は、そのうちにまずくなってきてしまいます。しかもふだん体によい食べ物を摂っている人ほど、味覚のセンサーが敏感になるのです。このように、医学が進んだとはいっても、自然が作った生命のすばらしさには人間の想像を絶するものがあります。
 “からだの声に素直に耳を傾ける”こと-それが、幸せな生活を送るためにとても大切なことです。

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“身近な「うつ」” (あおばタイムズ 4)

 この頃、うつ病の人が増えていると聞いたことがある方も多いと思います。年間でみると十~二十人に一人がうつ病になっているという統計も出ていますので、決して私たちの身近でない病気とは言えません。
 一言で「うつ」と言っても様々な起こり方があるのですが、多くの方に発症の可能性があるのは過労や睡眠不足が長い期間続いた事がきっかけとなるものです。「無理してでも頑張らなくちゃ」と何とか持ちこたえている間に脳の疲労が次第に蓄積し、いつしか限界に達してしまうと「もう頑張ろうにもがんばれない」といった、うつの状態になってしまうことがあります。
 うつの治療に用いる抗うつ薬は改善を早めるのに有効ですが、少しずつ効果が出てくるまでに一ヶ月前後の期間を要することが多く、また少なくとも数ヶ月間は継続して服用することが大切です。多くの方のうつは、長期間きちんと休養をとることができれば薬なしでも徐々に改善して行くと思われますが、服薬する場合・しない場合を問わず、治癒の過程で精神的に不安定になってしまう時期がよくみられます。うつの改善は直線的なものではなく、気分的に上向きになったり、また落ち込んだりといった波を経験しながら、ある時振り返ると「あぁ、前より良くなっているんだ」と気づかされるようなものだからです。冬には枝だけの寒々とした桜の樹が、春を待つと満開の花を咲かせるように、心が癒されるためには時間も必要なのです。

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「からだ」から出発する…ココロ

 今年の5月以降は気温や天候の変化がとくにはげしいので、体調をくずされた方も多いことと思います。
 かくいう私も、その道のプロ(?)でありながら軽い喘息があり、今年のこの天候には苦労させられています。

 以前は梅雨の前後の時期など寝る前や明け方には呼吸が苦しくなり、胸がヒューヒューいうこともあったので、いわゆる発作止めの吸入(β刺激薬)を使ってしのいだり、一時的に気管支拡張剤などのお薬を使っていたのですが、調子はなかなかよくなりませんでした。
 ところが、ある時先輩のドクターからステロイドの吸入薬を強くすすめられ毎日朝・晩きちんと吸入するようになってからというもの!、この一年以上、まったく発作は出ていません。
 「普通に呼吸できるって、こんなに楽だったんだぁ…」
 と、あたりまえだと思っていた状態が、じつは軽い喘息があって苦しい呼吸をしている状態だった私は、気づかされたのでした。

 というわけで、喘息で苦しんでいながら“ステロイド”と聞いて副作用を心配し、ステロイド剤の吸入に二の足を踏んでいる方。
 私の経験からも、ぜひ試してみられるよう強くおすすめします。
 (吸入薬ですので、内服ステロイド薬のように腸管から吸収され血液に入って作用するのではなく、気道の粘膜に付くことで喘息の原因ともいえる気道炎症をおさえてくれます。そのため、微量が粘膜から血中に入るだけなので副作用は非常に少ないと考えられます。)
 ただし、良くなったからといってすぐに吸入をやめてしまったら意味がありませんので、あしからず。…

 さて、ステロイド吸入薬のおかげもあって喘息にもあまり苦しめられることがなくなった私ですが、今年の4月以降どうも体調が悪い。風邪をひいたようになって、痰や鼻水が一週間以上もおさまりにくくなる症状を何度もくり返してしまうのです。
 熱はないし、食欲もまぁあるんだけれど、もともと喘息が出やすく呼吸器系が弱いものですから、痰や鼻水が多いと呼吸が苦しくなってしまって何だか元気が出ない。睡眠や休養を十分にとっても、なかなか疲れがとれるなくて体がきつい状態がつづいてしまう。
 4月から職場を変わったことも原因として考えたのですが、むしろストレスは自分で思うかぎり、3月までよりも減ったぐらい。
 何が原因なのか、どうにもスッキリしません。

 で、最近になってようやく気づいたのです。
 私は曜日によって二ヶ所の職場で働いているのですが、どうもそのうちの一ヶ所で働いている日、そしてそのあとの調子がとくに悪いようなのです。
 「何かのストレスかなあ???」…
 いやいや、精神的なものではなくて、明らかに身体に症状がでています。『そうか!?』
 以前、同じ職場で働いている人が、「仕事に来ると頭が痛くなる」と言っていたのを思い出しました。当時は私も、その人の頭痛は仕事のストレスが原因ではないかと思っていたのですが…
 どうも、“シックハウス症候群”のようなのです。その人も、私の症状も。
 その職場は、新しい建物ができてちょうど1年ほどでした。

 その次の勤務から、窓を開けて十分に換気するようにしたところ、それまでのようにすぐに疲れる感じはなくなりました。それに何だか、職場での時間経過の感じ方まで変わってきたように感じられたのです。(それまでは、どこかでイライラしていたようなところがありました。)
 とくに勤務中に出ることが多かった痰や鼻水も、あまり出なくなりました。(ティッシュペーパーの消費量が、目に見えて減りました!)

 というわけで、私たちの「意識」(頭で考えること)ではマヒして分からなくなってしまっていても、じつは「からだ」の方が気づいていること、というのはいっぱいありそうです。
 『からだなくして、こころ無し。』
 からだの“感性”を大切に生かしてあげることが、こころを大切にすることにつながってくるのではないか?-と感じる、きょうこの頃です。

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