“はじめの一歩” (あおばタイムズ 60)
カウンセリングへおみえになった方々のお話を聞いてみますと、予約を申し込むまでにかなり迷ったという方がほとんどと言っていいぐらいです。これが一昔前でしたら、カウンセリングを受けることが何か特別な事のように思われるケースも多かったかと思いますが、現在では、学校や職場、社会全体においてもカウンセリングへの理解が深まっています。たとえカウンセリングを受けようとするご本人に抵抗があるような場合でも、じつは周りの方々やご家族の方はそれをごく普通のこととして受け止めているケースが多いようです。ですからあまり無理をなさらず、悩みが解消されずに苦しんでいる方には最初の一歩を踏み出していただきたいと思っています。
核家族の中にあって、一人一人が仕事や家事といった大役を担い、あるいは仕事に就くべきだとのプレッシャーを受け、子供たちはそれぞれが将来を期待される…このような心の余裕が失われてしまいやすい現代社会にあっては、誰でもごく普通にカウンセリングを受けられることが大きな役割を果たすと信じています。ほんとうは、家族や友人といった身近にいる人間同士が日々起こるさまざまな出来事について語り合うことができるのが理想だと思うのですが、少なくとも今の時点では、カウンセリングやいわゆるスピリチュアルなものの見方が徐々に広がっていくことを通じて、そのような社会へと近づけていく営みが必要だと感じています。
二十世紀から二十一世紀の初頭にかけて、世の中は大いに便利になりましたが…どこかに大切なものを置き忘れてきてしまった気がしてなりません。たとえば、戦後の高度経済成長期の日本社会は今よりも未来への希望に溢れていたように言われますが、それはきっと戦中・戦後の時代を生きた人々が苦しかった経験を生かしながら、まごころと思いやりを持って社会を牽引していたからにちがいないと思っています。つまりとても苦しい時代を生き抜いたからこそ、そのあとに大きなよろこびを実現し感じることができたのでしょう。今の社会ではついつい手軽な楽しさや物理的な成功を求めてしまいがちですが、ほんとうの深いよろこびは、苦しみながらも生き甲斐を感じつつ、それなりの時間をかけてこそ得ることができるのかもしれません。
つまずいた時こそ、飛躍へのチャンスだと思います。「ピンチの後にチャンスあり」とよく言いますが、『ピンチこそチャンスである』と言った方がむしろ正しいのではないでしょうか。大事なことは、今ある状況を実際に切り開くことができるのは周りにいる人々ではなく、あくまでも自分自身であるということだと思います。ただ、周囲の人々にも手助けをすることはできます。どうしたらよいのだろう…と悩み続けている方々には、ぜひとも何らかのかたちで『はじめの一歩』を踏み出していただきたいと願っています。
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