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“三十七番” (あおばタイムズ 44)

 カウンセリングルームが入っているビルの一階に中華のお店があります。「ラーメン37」の赤い大きな看板が遠くからでも良く見える、中華の定食や麺類が何でも美味しい地元で人気のお店です。ここのラーメンを食べるためにわざわざ遠方からみえる方もいると聞いたことがありますが、いつもボリューム満点のメニューをいただいていて感心するのはご主人の誠意ある仕事ぶりです。
 初めてお店を訪れた頃、メニューがとても豊富なので「どれが美味しいのかな?…」と他のお客さんを観察していたのですが、それぞれ注文するものが違うようです。それだけにお客さんが多くなるとたった一人で調理しているご主人は息つく暇もなくなるわけですが、次々と注文された品を手際よく作り出す姿には惚れ惚れしてしまいます。そこに毎日同じ仕事を続けてきた人の職人魂が感じられるからです。
 ある朝お店を覗くと、黙々と大量の材料の仕込みをしているご主人の姿がありました。あの手際の良さの秘密は、時間をかけた入念な下準備にあったのです。力強い炎の前で料理を一気呵成に作りあげる姿と、包丁で数多くの材料をコツコツと切り揃える姿。そのどちらが欠けても、ご主人の作品は完成しないのです。
 昼休みや一日の仕事の終わりにこの店を訪れる人は皆、ご主人の作ってくれる美味しい料理を楽しみにしています。私もご主人の作る食事からいつも、午後の仕事へ向けて「がんばるぞ」というパワーをもらっています。

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“ラポール” (あおばタイムズ 43)

 医者になりたての頃、心療内科で「初めて出会った患者さんとラポールを作るよう努力しなければならない」と教えられました。ところで“ラポールを作る”とは、一体どういう意味なのでしょう?
 私の一人息子は一歳三ヶ月になります。父親も母親も働いているので保育園へ通わせていますが、そのせいもあって日曜日には余計に“甘ちゃん”になって抱っこをせがんできます。一昔前には「あまり抱っこばかりしていると抱き癖がついてしまう」とも言われたようですが、私と妻は今のうちにできるだけ甘えさせてあげようと考えています。私などは「抱き癖がつくと言っても、小学四・五年生になっても自分の足で歩かず抱っこされている子は見かけない」と心配していません。
 三歳の頃に親からひどく怒られたのを大人になった今でも覚えているという方がいますが、世界で唯一の拠り所であり、世界で一番安心させてくれるはずの人間から突然厳しい態度を向けられ、頭の中が“?”マークでいっぱいになって途方に暮れてしまった小さな心が想像されます。
 カウンセリングの場で「先生、厳しいことを言いますね」と言われたことがありますが、最初からそのような事は言いません。人によって期間は異なりますが、まずは安心してお話しできる環境を作ることこそ、カウンセリングにとって大切なことだからです。そのことを専門用語で『ラポールの形成』と言います。(カウンセリングにみえた方とカウンセラーとの)『信頼関係を作る』といった意味です。
 カウンセリングは人間関係や人生の縮図でもあります。もし今ある人間関係の中に安心や信頼感が見出せないという方がいたら、カウンセリングの中でそういう人間関係もあるということを実感していただきたいと思います。“類は友を呼ぶ”といいますが、一つの信頼関係という種を蒔くことができれば、それを実感した自分から周りへと波及し、いつのまにか日立のCMの“気になる木”のように、大きな信頼関係の輪が広がっているかもしれないからです。

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