“ラポール” (あおばタイムズ 43)
医者になりたての頃、心療内科で「初めて出会った患者さんとラポールを作るよう努力しなければならない」と教えられました。ところで“ラポールを作る”とは、一体どういう意味なのでしょう?
私の一人息子は一歳三ヶ月になります。父親も母親も働いているので保育園へ通わせていますが、そのせいもあって日曜日には余計に“甘ちゃん”になって抱っこをせがんできます。一昔前には「あまり抱っこばかりしていると抱き癖がついてしまう」とも言われたようですが、私と妻は今のうちにできるだけ甘えさせてあげようと考えています。私などは「抱き癖がつくと言っても、小学四・五年生になっても自分の足で歩かず抱っこされている子は見かけない」と心配していません。
三歳の頃に親からひどく怒られたのを大人になった今でも覚えているという方がいますが、世界で唯一の拠り所であり、世界で一番安心させてくれるはずの人間から突然厳しい態度を向けられ、頭の中が“?”マークでいっぱいになって途方に暮れてしまった小さな心が想像されます。
カウンセリングの場で「先生、厳しいことを言いますね」と言われたことがありますが、最初からそのような事は言いません。人によって期間は異なりますが、まずは安心してお話しできる環境を作ることこそ、カウンセリングにとって大切なことだからです。そのことを専門用語で『ラポールの形成』と言います。(カウンセリングにみえた方とカウンセラーとの)『信頼関係を作る』といった意味です。
カウンセリングは人間関係や人生の縮図でもあります。もし今ある人間関係の中に安心や信頼感が見出せないという方がいたら、カウンセリングの中でそういう人間関係もあるということを実感していただきたいと思います。“類は友を呼ぶ”といいますが、一つの信頼関係という種を蒔くことができれば、それを実感した自分から周りへと波及し、いつのまにか日立のCMの“気になる木”のように、大きな信頼関係の輪が広がっているかもしれないからです。
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