“自分を表現する” (あおばタイムズ 41)
ニューヨーク在住の世界的に有名な日本画家・千住博さんは『千住博の美術の授業 絵を描く喜び』(光文社新書)のなかで、「夢中になって描くだけなら、山のように描いてそれを押し入れにしまってすませばそれでおしまい。あえていえば、それは祈りのようなものです。でもそうではなくて、今ここで言いたいことは、人に見せるということ。見せてはじめてコミュニケーションが成立します。…どのくらい人間性を訴えられるか。人に伝えたいという心。繰り返しますが、これが大変重要なのです。」―と言っておられます。多くの人が自分を表現しようとする今の時代、示唆に富む言葉ではないでしょうか。
インターネット上のカウンセリング検索サイト「こころ相談.com」に掲載された私のコラムが、他のカウンセラーの方々のコラムと合わせて一冊の本になることになりました。九月頃には出版予定なので、原稿の最終チェックをすることになったのです。
カウンセリングルームを開設した頃から「あおばタイムズ」紙に文章を載せるようになったのですが、最初のうちは苦労の連続でした。たとえば日記のような自分のためだけに書く文章と、他の大勢の方に読んでもらうための文章を書くことが、これほどまでにちがった気の使い方を必要とする作業だとは思っていませんでした。
自分の書いた文章が本になることになって、私がこれまで以上に感じているのは“責任”のようなものです。他の方がこれを読んで何かを感じてくださるなら、私が伝えたいことを正しく表現しなければならない。…自分の原稿を読みながら推敲を繰り返し、途中で「もういいか―」と投げ出したくなる衝動を抑えつつ、締め切りまでの一週間は自分自身と闘いながら何とか打ち克てたという満足感がありました。
千住氏は言います。「何をやろうとしているのか、ということをいつも心に留めていないと、あらぬ方向に行ってしまいます。どこでもないところに辿り着いてしまうのです。何をやりたいかということをしっかりと問いかけながら制作する姿勢が必要なのです。」
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