“心の声、体の声” (あおばタイムズ 11)
三月二十一日。その日私は五年前まで暮らしていた福岡市へ行く予定でした。前日は広島の妻の実家に泊まり、朝早く起きて妻と一緒に新幹線で向かうつもりでした。ところがその朝、二ヶ月後に出産を控えた彼女の様子がいつもと違うのです。久しぶりに親友に会えるので私以上に福岡行きを楽しみにしていたのですが、前の日から歩いている途中で度々お腹が張るようになっていました。どうするかさんざん迷った末、残念ながら今回は福岡行きをとりやめることにしました。
妻の携帯電話にメールが入ったのは十一時半すぎ。彼女の友人は博多駅の構内で震度六近い地震に遭い、すぐに外へ避難するようアナウンスがかかったというのです!テレビには待ち合わせ場所に隣接する天神の福岡ビルが映し出され、歩道には窓ガラスが粉々になって散乱していました。画面に釘付けになった私たちは「お腹の赤ちゃんが福岡には行かないで!って教えてくれたんだね」と驚きを隠せませんでした。
動物たちは地震が近づくと普段とは違った行動をとると言いますが、お腹の中で自然に近い状態にいる赤ちゃんは私たちには感じられない何かを感じとっていたのかも知れません。赤ちゃんからのメッセージに気づいて思わぬ危険を回避できた私の妻のように、心の声や体の声に素直に耳を傾けることで進むべき方向が示されることもあるのだと、今回の出来事を通して感じました。
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